季節は5月
田んぼに水が張って、一面が湖のようになる季節である。
時刻は20:00を過ぎた頃。夜が少し深まっている頃が良い
場所は少し田舎。緑があることが好ましい。
必須なのは窓付きのお風呂。
これが現代を生きる人には少し難しい条件であるが、ないと成立しないのである。
このようなお風呂を持っていない人は、指を咥えて泣く泣く読むがいい。
時がきたら、まず風呂のドアを開けるところから始めよう。
電気が煌々とつく中、ゆっくりと体と頭を洗う。
ついでにお風呂の蓋を開けておく。
この時に窓は絶対に開けてはいけない。
理由は後ほどわかるから、今はとにかく風呂場に湯気を充満させることに集中してほしい。
一通り洗い終わったら、ここからがとっておきの方法である。
まず、湯気が逃げないように、隙間から外に手を出して、
脱衣所と浴室の電気を消す。どちらもだ。つまり真っ暗にする。
この時にあまり時間を取ってはいけない。暗闇に目を慣れさせるな。
そうしたら次は浴槽に両足を入れる。いいか。
そうしたら、今だ。窓を開け放つ。
スーッと入ってくる冷気。
体に浴びながら湯船にゆっくりとつかろう。
気分はまさに露天風呂だ。
ぐーっと肩まで浸かり、窓から外を眺めると、どこまでも深い暗闇。
かえるの合唱。
室内に充満させていた湯気が、
ゆっくりと外に流れ出ていく。
白い湯気が闇に溶けていく様子をぼーっと眺める。
深呼吸すると、夜の空気と深い森の匂いが旨いっぱいに広がる。
かえるの合唱に包まれて、身体は夜の森の中に沈んでいく。
温まってきた肌を夜の冷たい風が撫でる。
浴槽のヘリに頭をあずけて目を開けると、空には月が浮かんでいる。
さあ、これはなんて、なんて気持ちの良い体験だろう。
これを体験できる人はいったいどれだけいるだろう。
おそらくなかなかの田舎に住んでいるものしか体験できない。
ぜひ、我こそはこんな田舎に住んでいます!という人がいれば、堂々と胸を張って田舎の特権を味わい尽くすべきだ。

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